「医師の転職を考え始めたけれど、志望動機の書き方が分からず手が止まってしまう」
「毎日忙しくて、応募書類の作成に時間をかけられない」
このように、多忙な業務の合間で転職活動を進める医師の先生方にとって、志望動機の作成は大きな悩みの種ではないでしょうか。
経歴やスキルには自信があっても、それをどう言葉にして伝えれば良いのか、悩む方は少なくありません。
この記事では、採用担当者の視点を踏まえ、自身の経験と応募先の特徴を結びつけた、説得力のある志望動機の作成方法を4つのステップで具体的に解説します。
すぐに使える目的別の例文や、避けるべきNG例も豊富に紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を読めば、あなたの魅力が最大限に伝わる、ライバルと差がつく志望動機を効率的に作成できるようになります。
なぜ医師の転職で「志望動機」が重要視されるのか?
医師の転職活動において、履歴書や職務経歴書に記載するスキルや経験が重要であることは言うまでもありません。
しかし、多くの採用担当者は、それと同じくらい「志望動機」に注目しています。
なぜなら、志望動機には応募者の人柄や仕事への熱意、将来性など、経歴だけでは分からない情報が詰まっているからです。
特に人気のある求人では、複数の候補者の中から「この人と一緒に働きたい」と思わせる決め手となり得ます。
また、記載した志望動機は面接でさらに深掘りされることがほとんどです。
そのため、一貫性があり、自身の言葉で語れる内容であることが、採用を勝ち取るための重要な鍵となります。
採用担当者が見ている3つの評価ポイント
採用担当者は、志望動機から主に以下の3つのポイントを評価しています。
これらの視点を理解することで、より効果的なアピールが可能になります。
評価ポイント | 読み | 採用担当者が知りたいこと |
---|---|---|
入職意欲 | にゅうしょくいよく | なぜ他の医療機関ではなく、当院を選んだのか。理念や方針を理解し、長く貢献してくれる意思があるか。 |
人柄 | ひとがら | チーム医療への適性や、患者と向き合う姿勢はどうか。当院のスタッフと円滑に連携できるか。 |
論理的思考力 | ろんりてきしこうりょく | 自身の経験やスキルを客観的に分析し、分かりやすく説明できるか。課題解決能力は高いか。 |
具体的には、以下のような点がチェックされています。
- 入職意欲
- 応募先の理念や方針、特徴をどれだけ深く理解しているか
- 自身のキャリアプランと応募先の方針が合致しているか
- 入職後にどのように貢献したいかというビジョンが明確か
- 人柄
- チーム医療において、どのような役割を果たせるか
- 患者やその家族と、どのようにコミュニケーションを取るか
- 困難な状況にどう向き合い、乗り越えてきたか
- 論理的思考力
- これまでの経験や実績を、構造立てて分かりやすく説明できているか
- 課題に対して、根拠に基づいた解決策を考えられるか
- 自身の考えを、矛盾なく一貫して伝えられているか
これらのポイントを意識して志望動機を作成することで、採用担当者からの評価を大きく高めることができます。[^1]
医師転職の志望動機を作成する4ステップ
「重要性は分かったけれど、具体的に何から始めれば良いのか…」と感じる方も多いでしょう。
ここからは、誰でも論理的で説得力のある志望動機を作成できる、具体的な4つのステップを紹介します。
この手順に沿って進めることで、考えが整理され、書くべきことが明確になります。
- Step1: 自己分析とキャリアの棚卸しをする
- Step2: 応募先の徹底リサーチで「なぜこの病院か」を明確にする
- Step3: 「結論→根拠→貢献→展望」の黄金構成で組み立てる
- Step4: 具体的なエピソードで説得力を高める(STARメソッド活用法)
Step1: 自己分析とキャリアの棚卸しをする
魅力的な志望動機を作成するための第一歩は、自分自身を深く理解することです。
これまでのキャリアを振り返り、自分の強みや価値観を言語化することで、アピールすべきポイントが明確になります。
まずは、以下の項目について書き出してみましょう。
- 経験・実績
- 専門とする診療科や分野
- 担当した症例数や種類、習得した手技
- 論文執筆、学会発表、研究などの実績
- 後輩指導やチームリーダーなどのマネジメント経験
- スキル・強み
- 専門的な知識や技術
- コミュニケーション能力(患者、家族、スタッフとの連携)
- 課題解決能力、提案力
- 価値観・理念
- 医師として最も大切にしていること
- どのような医療を実現したいか
- 将来のキャリアプラン
- 5年後、10年後にどのような医師になっていたいか
- どのような分野で専門性を高めたいか
これらの要素を整理することで、志望動機に厚みと一貫性を持たせることができます。
Step2: 応募先の徹底リサーチで「なぜこの病院か」を明確にする
次に、応募先の医療機関について徹底的にリサーチします。
リサーチが不十分だと、「どの病院でも良いのでは?」という印象を与えかねません。
「なぜ、この病院でなければならないのか」を明確に語れるように、以下の情報源を活用して理解を深めましょう。
- 公式サイト
- 病院の理念や基本方針、院長の挨拶
- 各診療科の紹介ページ(医師、実績、特色など)
- 最新ニュースやプレスリリース
- 各種資料
- 年次報告書や広報誌(公開されていれば)
- 地域の医療計画に関する公的資料
- 外部情報
- 医師転職サイト・エージェントが提供する詳細情報
- 学会やセミナーでの情報収集
- 知人や先輩など、内部事情を知る人からの情報
リサーチを通じて得た応募先の特徴と、Step1で分析した自身の強みやキャリアプランとの共通点を見つけ出すことが、説得力のある志望動機を作成する鍵となります。[^2]
Step3: 「結論→根拠→貢献→展望」の黄金構成で組み立てる
自己分析と企業研究で材料がそろったら、それらを論理的な構成で組み立てていきます。
志望動機は、以下の4つの要素で構成するのがおすすめです。
この「黄金構成」を意識するだけで、伝えたいことが明確になり、採用担当者が理解しやすい文章になります。
構成要素 | 書くべき内容 |
---|---|
結論 | なぜこの医療機関を志望するのか、最も伝えたい理由を最初に述べる。 |
根拠 | 結論に至った理由を裏付ける、自身の具体的な経験やエピソードを示す。 |
貢献 | これまでの経験やスキルを、入職後にどのように活かして貢献できるかを具体的に提示する。 |
展望 | この医療機関で、将来的にどのような医師になりたいか、キャリアプランを語る。 |
このフレームワークに沿って情報を整理することで、自己満足ではない、相手に響く志望動機を作成できます。
Step4: 具体的なエピソードで説得力を高める(STARメソッド活用法)
根拠を示す際には、抽象的な表現ではなく、具体的なエピソードを盛り込むことが説得力を高める上で不可欠です。
その際に役立つのが「STARメソッド」というフレームワークです。
STARメソッドは、自身の経験を構造的に整理し、客観的な事実として伝えるのに非常に有効です。
要素 | 読み | 説明 |
---|---|---|
Situation | シチュエーション | 自身が置かれていた状況や背景 |
Task | タスク | その状況で達成すべきだった課題や目標 |
Action | アクション | 課題・目標に対し、自身が具体的にとった行動 |
Result | リザルト | 行動の結果、どのような成果が得られたか |
例えば、「コミュニケーション能力が高いです」とだけ伝えるのではなく、「〇〇という状況で、〇〇という課題に対し、〇〇のように関係各所と連携した結果、〇〇という成果を上げることができました」と語ることで、信頼性が格段に向上します。
【目的・状況別】医師転職の志望動機 例文7選
ここからは、医師の先生方が直面するさまざまな転職シーンに合わせた志望動機の例文を7つ紹介します。
ご自身の状況に最も近いものを参考に、オリジナルの志望動機を作成してみてください。
各例文の後には、アピールすべきポイントの解説も加えています。
例文1:キャリアアップを目指す場合(専門性の深化)
貴院が〇〇(専門分野)領域において、国内トップクラスの実績を持ち、最新の〇〇(医療技術や設備名)を積極的に導入されている点に強い魅力を感じております。
私はこれまで、〇〇大学病院にて〇〇領域の臨床経験を〇年間積んでまいりました。
特に〇〇(具体的な手技や症例)については〇件以上執刀し、学会での発表経験もございます。
これまでの経験で培った知識と技術を、貴院の先進的な環境でさらに磨き、より高度な医療を提供することで患者様へ貢献したいと考えております。
- ポイント解説
- 応募先の実績や設備を具体的に挙げ、「リサーチ済であること」と「明確な目的意識」を示す。
- 自身の経験を具体的な数字(年数、件数)で示し、客観的な実績をアピールする。
- 「経験を活かす」だけでなく、「さらに磨きたい」という向上心を見せる。
例文2:ワークライフバランスを改善したい場合
医師として患者様一人ひとりと真摯に向き合う医療を追求したいという思いと同時に、自己研鑽や家族との時間を確保することも、長期的に質の高い医療を提供するためには不可欠だと考えております。
貴院が推進されているチーム医療体制と、医師のワークライフバランスを重視する理念に深く共感いたしました。
前職で培った〇〇(診療科)の臨床経験を活かし、チームの一員として貢献するとともに、確保できた時間で最新の医療知識を学び、診療に還元していく所存です。
- ポイント解説
- WLB改善を「長期的に質の高い医療を提供するため」というポジティブな動機に転換する。[^3]
- 応募先の理念や体制への「共感」を具体的に示す。
- 確保した時間を自己研鑽に充て、医療に還元したいという意欲を見せることで、向上心をアピールする。
例文3:未経験分野・転科に挑戦する場合
私はこれまで〇〇科の医師として、〇〇(疾患など)の患者様を中心に診療にあたってまいりました。
その中で、患者様の心理的ケアの重要性を痛感し、精神科領域への強い関心を抱くようになりました。
貴院は、〇〇(研修制度など)が充実しており、未経験からでも専門性を高められる環境であると伺い、志望いたしました。
〇〇科で培った丁寧な問診スキルと、患者様に寄り添う姿勢は、精神科の領域でも必ず活かせると確信しております。
一日も早く戦力となれるよう、熱意を持って研修に臨む所存です。
- ポイント解説
- 未経験分野に興味を持った「きっかけ」となるエピソードを具体的に語り、動機に説得力を持たせる。
- これまでの経験から活かせる「ポータブルスキル」を明確に提示する。
- 「教えてもらう」という受け身の姿勢ではなく、「一日も早く貢献したい」という能動的な熱意を強調する。
例文4:アカデミアから臨床へ移行する場合
私はこれまで大学病院にて、〇〇(研究テーマ)に関する基礎研究に従事してまいりました。
研究を通じて〇〇という知見を得ましたが、今後はこの成果を臨床現場で直接患者様に還元したいという思いが強くなりました。
貴院が〇〇(理念など)を掲げ、地域に根差した医療を提供されている点に魅力を感じております。
研究活動で培った論理的思考力と探求心を、個々の患者様に最適な治療法を見出すために活かし、貴院の医療の質向上に貢献したいと考えております。
- ポイント解説
- なぜ臨床に移りたいのか、その心境の変化を明確に説明する。
- 研究経験というアカデミックな経歴が、臨床現場でどのように役立つのかを具体的に結びつける。
- 「研究」で培ったスキルを「臨床」という異なるフィールドで活かす意欲を示す。
例文5:マネジメント・リーダー職を目指す場合
私はこれまで〇〇病院にて、〇〇科の医長として若手医師の指導やチームマネジメントを経験してまいりました。
その中で、個人のスキルアップだけでなく、チーム全体の医療レベルを向上させることに大きなやりがいを感じるようになりました。
貴院が掲げる「チーム医療の推進」という方針のもと、これまでのマネジメント経験を活かし、医療安全の強化や後進の育成に貢献したいと考えております。
将来的には、診療科の枠を超えた連携を促進し、病院全体の発展に寄与できる人材になりたいと考えております。
- ポイント解説
- プレイングマネージャーとしての実績と、マネジメントへの意欲を明確に示す。
- 自身のキャリアプランが、応募先の病院が目指す方向性と一致していることをアピールする。
- 診療科のリーダーに留まらず、病院全体への貢献意欲を見せることで、高い視座を持っていることを示す。
医師の転職でマイナス印象を与える志望動機と改善策
意欲を伝えようとするあまり、かえってマイナスな印象を与えてしまうケースもあります。
ここでは、医師の転職でやりがちなNGな志望動機の例と、それをポジティブに転換するための改善策を紹介します。
NG例1:待遇面への言及が中心になっている
給与や休日、勤務時間といった待遇面の話ばかりを前面に出してしまうと、仕事そのものへの意欲が低いと判断されかねません。
項目 | 内容 |
---|---|
NG例 | 「貴院は給与水準が高く、当直もないと伺い、魅力に感じました。充実した福利厚生のもとで働きたいと考えております。」 |
なぜNGか | 働く条件にしか興味がないように見え、貢献意欲が感じられません。採用しても、より良い条件の職場があればすぐに辞めてしまうのではないか、という懸念を抱かせます。 |
改善例 | 「貴院の〇〇という理念に共感しております。また、医師が心身ともに健康でなければ質の高い医療は提供できないという考え方のもと、勤務環境を整備されている点にも感銘を受けました。充実した環境で自己研鑽に励み、その成果を患者様に還元することで、貴院に貢献したいです。」 |
- 改善のポイント
- 待遇の良さを「自己研鑽や医療への貢献に繋がる環境」と捉え直し、ポジティブな動機として再定義します。
NG例2:ネガティブな退職理由をそのまま伝えている
前職の人間関係のトラブルや、労働環境への不満をストレートに伝えるのは避けましょう。
他責思考が強い、あるいは環境への適応力が低い人物という印象を与えてしまう可能性があります。[^4]
項目 | 内容 |
---|---|
NG例 | 「前職は上司との意見が合わず、また長時間労働が常態化しており、心身ともに疲弊したため退職を決意しました。」 |
なぜNGか | 不満や愚痴は、聞き手に良い印象を与えません。新しい職場でも同様の問題を起こすのではないか、と懸念される可能性があります。 |
改善例 | 「前職では多くの臨床経験を積むことができましたが、より専門性を高められる環境で新たな挑戦をしたいと考えるようになりました。今後は、これまで培った経験を活かしつつ、〇〇の分野で専門知識を深めたいと考えております。」 |
- 改善のポイント
- 退職はあくまで「未来に向けたステップ」と位置づけ、ネガティブな事実は述べずに、前向きな転職理由に焦点を当てます。
NG例3:どの病院にも当てはまる抽象的な内容
「地域医療に貢献したい」「患者様中心の医療を実践したい」といった言葉は立派ですが、具体性に欠けると熱意が伝わりません。
項目 | 内容 |
---|---|
NG例 | 「貴院の理念に共感し、地域医療の発展に貢献したいと思い、志望いたしました。患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供していきたいです。」 |
なぜNGか | どの病院にも言える内容であり、「なぜ当院なのか」が全く伝わりません。リサーチ不足や、入職意欲の低さを疑われる原因になります。 |
改善例 | 「貴院が特に力を入れている〇〇(具体的な取り組み、例:在宅医療、予防医療など)に深く共感しております。私はこれまで〇〇の経験を積んでまいりましたので、その知見を活かして貴院の〇〇の取り組みに貢献できると考えております。」 |
- 改善のポイント
- リサーチで得た応募先「独自」の情報を盛り込み、「なぜこの病院でなければならないのか」という理由を明確にします。
医師転職の志望動機最終チェックリスト
書類を書き終えたら、提出する前に必ず以下の項目を最終チェックしましょう。
客観的な視点で確認するために、可能であれば第三者に読んでもらうことをお勧めします。
- 誤字脱字、敬語の間違いはないか?
- 応募先の医療機関名、理念、方針などを正確に記載できているか?
- 結論ファーストで、論理的な構成になっているか?
- 具体的なエピソードや数字が盛り込まれているか?
- ネガティブな表現や、他責にするような記述はないか?
- 自身の言葉で、熱意と誠意が伝わる内容になっているか?
- 履歴書全体や職務経歴書の内容と矛盾はないか?
- 文字数が適切か?(一般的に200文字から300文字程度が目安)
医師転職の志望動機についてまとめ
本記事では、医師の転職活動を成功に導くための、志望動機の書き方を解説しました。
重要なポイントを改めて振り返ります。
- 採用担当者は「入職意欲」「人柄」「論理的思考力」を見ている
- 「自己分析」と「企業研究」が全ての土台となる
- 「結論→根拠→貢献→展望」の黄金構成で分かりやすく伝える
- 具体的なエピソードで説得力を高める
志望動機を作成する過程は、ご自身のキャリアを見つめ直し、次のステップを考える貴重な機会でもあります。
もし一人で作成することに不安を感じたり、客観的なアドバイスが欲しかったりする場合は、医師専門の転職エージェントに相談するのも非常に有効な手段です。
医師専門の転職エージェントの選び方がわからない方は下記の記事を参考にしてください。
参考:医師転職エージェントの選び方を目的別に徹底解説!失敗を避けるための注意点も紹介
この記事が、先生方の輝かしいキャリアの実現の一助となれば幸いです。